カートリッジヒーターは、使用する金属パイプの材質によって耐熱性能が大きく異なります。過酷な温度条件下において、カートリッジヒーターの材質の違いが実際の耐熱温度や耐久性にどの程度の差をもたらすのか、実証実験の結果をもとに解説します。
2. 実験条件と環境
カートリッジヒーターを使用し、シース材質が「SUS304」と「インコロイ800」の2種類を用意しました。
それぞれのカートリッジヒーターの内部および外部に熱電対を取り付け、以下の条件で測定を実施しています。
環境: 常温大気中
測定項目: 1. 任意電力におけるカートリッジヒーターの表面温度と内部温度の推移 2. 断線に至るまでの通電限界温度の特定
3. 実験結果と考察
表面温度と内部温度の相関
同じ電力で通電した場合、カートリッジヒーターの表面温度については、SUS304とインコロイで大きな差は見られませんでした。(下記グラフ参照)
しかし、内部温度を比較するとSUS304を採用したカートリッジヒーターの方が高温となり、目視においてもSUS304側の方がより明るく発光していることが確認されました(下記写真)
耐久試験と断線までのプロセス
さらにカートリッジヒーターの温度を段階的に引き上げた結果、
SUS304は950℃への調整段階で断線に至りました。
一方、インコロイ製のカートリッジヒーターは、950℃で30時間を経過後、さらに表面温度1000℃まで引き上げましたが、その後50時間が経過しても断線せず、安定した動作を継続しました。
内部温度差(ΔT)が寿命に与える影響
上記グラフは、カートリッジヒーターの内外温度差を示したものです。インコロイ製に比べ、SUS304製のカートリッジヒーターは内外の温度差が顕著に大きいことが判明しました。
インコロイ: 表面900℃に対し、温度差は約150℃を維持。
SUS304: 当初は220℃前後の差でしたが、100時間経過後には320℃まで拡大。
この温度差の拡大は、SUS304表面の酸化や剥離によって熱伝導率が悪化したことが原因と考えられます。結果として、カートリッジヒーター内部の発熱線が限界温度を超え、断線に繋がったと推測されます。
4. まとめ
今回の実験により、シース材質がカートリッジヒーターの製品寿命に直結することが確認されました。
耐熱限界の目安: SUS304は900℃付近での常用は困難であり、インコロイでも950℃程度が実用限界と考えられます。
熱伝導率の重要性: インコロイ製のカートリッジヒーターは熱伝導率が良好で、内外温度差を小さく抑えられるため、発熱線への負荷が軽減されます。
結論として、高温域で使用するカートリッジヒーターには、インコロイ材質を選択することが寿命延伸において極めて有効です。
※ただし、SUS304に比べてインコロイ800のパイプ自体の入手径が決まった径のものしか入手できないので、使い方によってはSUS304を選定した方がいい場合もございます。



